2012年11月29日木曜日

健康への道を制限する「信念」の壁を取り去る

通常の医学モデルでは腰痛や膝痛の患者さんに対して、安静指示やコルセットによる固定などで動きを制限することで痛みを軽減させるアプローチがとられます。さらには、「○○の姿勢は腰痛を引き起こすからよくない」「○○の動作は腰痛を引き起こすからよくない」など自由に身体を動かすことを制限させる指導が様々な角度から伝えられます。

痛みを抱える患者さんはその指導を忠実に守り、何の疑いもなくその姿勢や動きが痛みの原因と思い込み身体を制限させる行動をとるようになります。するとその制限したことによる不自然な姿勢や動作が原因となって、筋肉のバランスに悪影響を及ぼすこともあり、二次的な症状に悩まされることがあります。身体を制限させる指導は、身体の動きや不自然なバランスを引き起こす不健康な「暗示」になっているかもしれません。

情報化社会といわれる今日では、様々な情報が錯綜しています。特に身体の症状に不安を感じている時には、藁をもつかむ思いで、いわゆる権威者による情報を信じてしまい、自分の身体の感覚を信じられなくなっている場合も少なくはないようです。

もしも、自分の身体を制限させ、不健康にさせるような信念体系ができている場合、その「信念」の書き換えが必要になります。そのためには、その「信念」がプログラム化されるに至った情報がどこから入ってきているのかを探索しなければなりません。その探索を効果的に引き出してくれるのがコーチングによる質問です。

踵の痛みが慢性的に継続している患者さんがいました。通院していただきながら、だんだんと改善してはいるものの、足関節の異常バランスが元に戻るということが見えてきました。教師をされているので立位姿勢が多いのですが、デスクワークの際の足の位置を尋ねてみると、不自然な位置にあることが分かりました。それは、膝関節部が股間関節部よりも下位に来るようにして、つま先が後ろに向いて足の裏は上に向けるようにしているとのことでした。

通常では、足の裏が床に就くことが自然ではありますが、足の裏が床についていない不自然な状態とのこと。「そのような姿勢をとるようになったきっかけは何ですか」と尋ねると、「膝関節が股関節よりも上に来る位置に腰かけると腰によくない」とある先生に指導されたとのこと。もう一つの理由は、腰痛を予防するために、バランスが取れる椅子を使用していたとのことでした。

その人にとって何が自然で何が不自然なのかその人の身体のみ知ることでしょう。大自然が常に変化するように、身体の姿勢がその環境や感情に応じて常に変化するのが自然体を維持するということなのかもしれません。自然な健康体を維持するためには、様々な健康情報から引っ張り出した知識よりも、その人にしかないオーダーメイドの健康管理が大切です。

 そのために治療者や患者さんは、単に健康情報を鵜呑みにするのではなく、本当にその情報が自分に合っているのかどうかということを吟味して、不健康な信念体系ができないように注意することが必要です。もしも、不健康にさせている信念体系ができている場合は、コーチングによって複雑に絡み合った信念の糸をほぐすように整理して、自分に合った健康管理の道やゴールを見つけ出すことが効果的でしょう。

2012年11月28日水曜日

コーチングスキルが臨床現場で活かされる


先日、不眠症で悩む患者さんが二日連続で通院され、約5年ぶりにまともな睡眠を取ることができたとのご報告をいただいた。その患者さんは、睡眠時間が毎日平均して2~3時間で、頭痛や気分の落ち込みが時々あるとのことで来院。休職中で早く復帰したいとのこと。大学の附属病院の心療内科や他の精神科も受診。

約6年前にうつ病と診断されて投薬治療を始めたが効果がないとのこと。最近受診した医師の診断では、「うつ病」ではなく「気持ちの持ちようだ」といわれ、漢方薬を処方されたが効果がなかったらしい。

最初はご本人よりも奥様の方が何とかしたいという印象を受けた。お住まいが遠方なので継続して治療を続けることが難しい状況。初めに2日間連続で来院された後、3か月後に再度2日間連続で来院していただき、今回の来院で改善への突破口が開かれたように感じた。

「不眠」の症状を改善させるために、単に身体的な機能を回復させるだけでなく、不眠に至った原因やプロセスを把握し、不眠という症状を創りだすプログラムの再構築が必要になる。不眠を引き起こすプログラムは患者さんによって様々である。「そのプラグラムはどこからどのようにして構築されたのか」その探索への道のりを患者さんと共に歩きながら改善へのカギを見つけ出すことがポイントになる。

そこで大切なのは、患者さん自身が主体的にその探索に関わるということ。そして、治療者が評価や判断をするのではなく、患者さん自身の経験に基づいた「気づき」を得るということ。その探索への道のりで治療者に求められるのは、患者さんへの「質問力」である。どのような質問を投げかけるかによって、今まで考えたことのない思考へのスイッチが入る。すると今まで考えてもいなかった領域に「スポットライト」が当てられる。

この新たな領域にスポットライトを当てることが、「負のサイクル」から抜け出す改善への第一歩を踏み出すきっかけとなることが多い。脳への大きな刺激となる「質問」は、患者さんとの関係性の中で瞬間、瞬間に創り出される。マニュアル的に用意された質問を投げかけるのではなく、それぞれの患者さんの経験に応じて、その場その場で直感的に質問を投げかけることが必要になる。その「質問力」や「直観力」を身に着けるためには、知識だけでなく「トレーニング」が必要である。

コーチングのトレーニングにおいては様々な経験を積みかさねて自分の血肉にしていくことが必要である。コーチングに関わる知識情報を知ることも大切だが、実践的なコーチングでは単に知識を持っているだけでは活かしきれない。人のメンタルや行動に関わる問題は、つかみどころがなく、答えは常に患者さん自身の中にある。

患者さんとの「より良い関係」を優先するが故に、患者さんと同じ思考ラインに入って、患者さんが考えているパターン領域しか見えない、見ようとしないということもあるだろう。患者さんを刺激しないように不快な感情を与えないように細心の注意を払うかもしれない。しかし、患者さんが求めている症状を改善させるためには、時には鋭い質問を投げかけることも必要になる。患者さんとの信頼関係にひびが入るかも知れないということも踏まえてのチャレンジ的な質問も必要になるだろう。

コーチングでは常にクライアントの「主体性」を引き出すことが基本となる。誰かにさせられている、誰かに責任を転嫁するというパターンでは、本質的な問題が解決されないことが多い。治療者は患者さんの肉体的、メンタル的な問題を解決するお手伝いをするうえで、時には指導や助言を行いながらより健康になれるようにサポートをしていく。その過程の中で、患者さんの「主体性」を引き出すことはとても重要な課題になるだろう。

本当に役立つコーチングを身に着けるためには知識だけでは限界がある。実践的なコーチングのトレーニング受講することで、コーチングの本質を肌で感じ、実戦で何度もチャレンジと失敗を繰り返し、さらに受講者間で信頼関係に基づいた深いフィードバックをし合いながらコーチとしての基礎を築き上げていく。

通常、コーチングの効果を測るためには、コーチングの前と後の数値的な比較が必要になる。その結果を見て初めてコーチングの成果が分かることが多い。しかし、施術の中で取り入れているコーチングの場合、いつコーチングをされ、どのようなコーチングをされたのか分かりにくいことが多い。特に複雑な症例の施術効果の背後には随所にコーチング手法が何気なく使われて自然に施術効果が引き出されていることが多い。

コーチングの学びの中で、「質問力」に加えて奥深さを感じさせるのは「フィードバック」である。コーチングのトレーニングを受けると、見方のバリエーションが幅広くなるため、自分自身の振り返りと同時に幅広い視点から物事をとらえ、様々な角度に「スポットライト」を当てる技能が身に付きやすくなる。コーチングは治療効果を最大限に引き出す「縁の下の力持ち」になってくれるだろう。

2012年11月16日金曜日

なぜ、集中継続治療が大切なのか?

治療院を訪れる患者さんにとって「すぐに治るのですか」ということは大きな関心ごとです。多くの治療者はできるだけ早く患者さんの苦痛を和らげるため最大限の努力をするでしょう。骨折や切り傷などの外傷は、その程度や年齢に応じて、患部の組織が修復する期間がある程度予測できます。それは、自然治癒力という治す力が備えられているからです。

組織が損傷したことによる症状であれば、擦り傷が日を追うごとに治ってくるように、自然治癒力によって修復され、それに伴って症状も改善されます。これは「損傷モデル」ともいわれています。医学の基本はこの「損傷モデル」から始まっていることから「メディカルモデル」ともいわれています。この「損傷モデル」は外傷をはじめとする様々な病気の治療に多大な貢献をしてきました。

しかし、情報化社会が進化するにしたがって、病気や症状の種類も多様化し複雑化してきました。そして、単に「損傷モデル」だけでは対応しきれない病気や症状が増えてきているのが現状です。「いつ治るのか」ということがはっきり言えないのが慢性症状です。最近の研究ではそのような慢性症状は、「生物・心理・社会的モデル」といわれています。これは、主に組織損傷を原因とする「損傷モデル」に対して、神経生理学的関係性や心理社会的関係性を原因としています。

したがって、「生物・心理・社会的モデル」は幾種類もの原因パターンが複雑に関係しており、症状の改善はその原因パターンの修復次第ということになります。その原因パターンとは身体、特に脳・神経系に学習記憶されており、様々な場面でスイッチが入り、症状が引き出されます。脳・神経系に学習記憶されているパターンは、目には見えない症状を引き起こすプログラムのようなものです。そのプログラムを修正するために学習記憶の上書きが必要になります。

慢性症状がいつ改善されるかどうかは、症状を引き起こしている学習記憶のパターンの種類や数によって異なり、「損傷モデル」のように症状別にいつ治るかを予測することは困難です。学習記憶という意味を分かりやすくいうと、症状を引き起こす身体の「クセ」です。知らない間に蓄積された症状を引き起こす「隠れた習慣」のようなものです。したがって、その「クセ」を治すためには、バランスの良い状態を身体に再学習させることが必要で、バランスの良い状態にクセづけるように繰り返し治療をすることが必要です。

集中して継続治療することで、どの原因パターンが改善されて、どの原因パターンがぶり返しているのかが明確になりやすくなり、治癒力も強化しやすくなります。勉強の記憶学習や身体で覚えるスポーツのように、最初に集中して治療することで、身体はどのようにして治していくのかを学習記憶していくわけです。治療の間隔が開き過ぎると、記憶が定着せずに振り出しに戻りやすくなります。

慢性症状の状態が長く、症状につながる学習記憶のパターンの数が多ければ多いほど治療回数もその数だけ必要になります。慢性症状を治すための集中継続治療は、治癒力を強化するための必要条件です。慢性症状をかかえている患者さんの多くは、その症状が当たり前のようになって、この症状は治らないと思い込んでいる方が多いようですが、基本的に人の身体は治るようになっています。慢性症状を治すポイントは、いかにして症状につながっている学習記憶されたパターンを消去できるかどうかです。

「継続して治療すると症状が戻りにくくなるということがよくわかった」という体験をされた患者さんへのインタビューです。



2012年11月7日水曜日

「考えるだけで家電操作」と「イメージだけで検査治療」

2012/11/2付の日経新聞に「考えるだけで家電操作」という見出しで記事が紹介されていました。考えるだけで車いすを動かしたり家電を操作したりできる“賢い住宅”を開発しており、住んでいる人の頭部にセンサーを取り付けて脳波の変化をコンピューターに送信し指令を出す仕組み。2020年前後の実用化を目指すとのことです。

数年前からこのような脳波を読み取って機会を動かす技術研究は進化しています。このような技術を日常生活で使うことが十数年後には当たり前になっているかもしれないですね。そうして考えると、ファミリーカイロで行っている「イメージしながら検査」、「イメージしながら治療」という治療法(ニューロパターンセラピー)もそのうちに「不思議な治療」から「当たり前の治療」へと変化してくるかもしれません。

治療した後は良くなるけれども家に戻ると症状がぶり返す、あるいは職場に行くと症状がぶり返すという「ぶり返すパターン」を調べる際に、どの場面で症状がぶり返しているのか検査をします。脳は緊張するパターンを学習記憶していますので、その場面をイメージしてもらうと「反応」を示します。

その場合、その場面での身体の誤作動状態を引き出したまま治療することが必要になりますので、患者さんにはしばらくその場面をイメージしてもらったままで治療を施します。身体に学習記憶された誤作動のパターンは視覚的な場面だけでなく、動作や姿勢にも関係していることがあります。

このようにイメージしながら検査、治療するということは機械的に考えると不思議に思えるかもしれません。しかし、脳(心)と身体は密接に関係し合っていますので、あえて言えば、イメージしながら治療するということが本質的な症状の改善につながるわけです。

 
最近、患者さんから、症状に結びついている可能性がある季節のパターンや周期的なサイクルのパターン検査を求められることが増えてきました。このように積極的に症状のパターンがどこからきているのかを探すことは症状を改善するうえでとても大切なことです。

一般的に「身体の問題は構造的な問題」という身体を部品としてみる機械的な考え方が、多くの人達に染みついています。しかし、本質的な原因はその奥にある無意識のパターンや習慣にあることが多いようです。もしかすると、○○のパターンが影響しているかもしれないということがありましたらお気軽にご相談ください。


この動画ファイルは、イメージによる治療を受けた患者さんの音声インタビューです。

2012年11月5日月曜日

「セラピー」から「コーチング」への橋渡し

日本ではセラピー、あるいはカウンセリングという言葉は一般的によく知られているようだが、コーチングというものにはまだまだ馴染みがないようだ。

セラピーやカウンセリングを必要とするクライアントは、肉体面、あるいはメンタル面に苦痛があって、それを改善したいという人が多いだろう。そして、セラピストやカウンセラーはクライアントの問題を改善、あるいは軽減するために、主に過去の事柄に焦点を当てながら問題の原因を、様々な角度からサポートする。

実際のセラピーやカウンセリングでは、肉体的、あるいはメンタル面の苦痛を少しでも早く軽減するために、現在の状況を具体的に知るための質問をして、肉体面であれば治療的なワークを施し、メンタル面であれば、その悩みや不満を改善するためのガイダンスや助言を行ったりする。
一方コーチングでは、肉体的、あるいはメンタル的に生活に支障があるほど問題ではないが、より豊かな人生を望むクライアントが多い。コーチはクライアントがより豊かになれるゴールへと向かうために、主に現在と未来に焦点を当てながら、クライアントの今までの思考習慣、ならびに行動習慣が変化できるようサポートする。

コーチングでは、現在の状況をより具体的かつ客観的に表現し、認知することでよりコーチングのサポート力が高まる。しかしながら、全てのクライアントが現在の状況を具体的かつ客観的に表現できるとは限らない。特定の課題や問題に対して批判的になったり、善悪の判断にこだわったりして、ネガティブな感情や負の行動のサイクルから抜け出せずに現状が変化しない場合もある。

ネガティブな感情を改善するためには適切なセラピーが必要になるだろう。ニューロパターンセラピーでは、ネガティブな感情に関係する他の感情のキーワードを検査によって引出し、それらの感情を整理しながら生体反応と結びついている神経生理学的異常反応を消去する施術を行う。さらに、必要であればコーチングの手法を取り入れて、クライアントの「理想の状態は何なのか」、「どこへ向かいたいのか」など、未来のためのサポートを行う。

セラピーもコーチングもクライアント自身から生まれる気づき(自己洞察)を大切にする。治療的セラピーによるクライアントの気づき(自己洞察)によって大きな変化がもたらされることもあるが、実生活の中での過去の行動様式や思考パターンのサイクルから抜け出して、新たなサイクルへとシフトしていかなければ、その気づきがひと時の自己満足で終わり、実生活の中では何も変わらず元の負のサイクルをぐるぐるとまわっているだけということも少なくはない。

多くのクライアントは時には肉体面ならびにメンタル面の苦痛の改善を目的とする「セラピー」が必要になり、また時にはより豊かで理想の未来をサポートするコーチングが必要な場合もある。ニューロパターンセラピーは、その両方の橋渡しをしながらクライアントがより豊かな人生が送れるように全体的なニーズをサポートする。