2015年1月19日月曜日

送球イップスの改善、(エピソード記憶、判断グセによる弊害)


送球イップスはピッチャー、キャッチャー、野手など様々なポジションで起こりうる。また、ある野手は一塁に送球する際、あるキャッチャーは軽くピッチャーに戻す送球がうまく送球できなくなったなど様々である。

今回、来院された患者さんは、外野手で中距離や遠距離などの送球は問題はないが、練習初めに軽く近距離のキャッチボールをする際にイップスの症状が現れるという。振り返ってみると、このような症状は中学生の時から発症していたとのことで、その症状が送球イップスであるということは大学生になってから知ったという。

野球は社会人になっても継続したいので、しっかりと治したいとのことで来院された。ファミリーカイロにてアクティベータ療法と心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)を開始して、6回目の施術の際には、ほぼ症状が改善されて、ある程度の自信を持たれていた。

それから4か月後、以前よりはずいぶん改善されているけれども何か不安になる自分がいるということで来院。心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)で検査をしてみると、送球の体感でのイメージによる生体反応検査では陽性反応が示されない。次に自分を客観視して映像の中にいる主人公のようにイメージをしてもらい検査をすると陽性反応が示される。

心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)では「セルフイメージ」といっている反応で、長期記憶で陳述記憶のエピソード記憶に含まれる。このエピソード記憶には、自伝的記憶も含まれ、自分の経験やそのときの感情もエピソード的に脳に記憶され、自分は症状があり不安な感情をともなう人になり続けている、つまり、学習記憶されている誤作動の反応である。

このエピソード記憶による誤作動は送球イップスに限らず症状が慢性化している患者さんに多くみられる反応である。このようなエピソード記憶やもう一つの陳述記憶である意味記憶による誤作動も、単に「気のせい」ではなく、脳で創り出している症状なので、治療が必要である。

今回の送球イップスの患者さんでは、さらにエピソード記憶の背後にある「信念関係」を検査したところ、「猜疑心」(自分自身が治っていることへの疑い)、と「忠誠心」(努力しないとうまくなれない)という信念が関係しており、「努力しなくては」というその背後には、努力するためのネガティブな自分をあえて作っているような心の構造が隠れていた様子。

送球イップスに限らず、肉体面の誤作動は、「頭で考える心」と「身体で感じる心」との不調和から生じる。特に「頭の心」が良い悪いの判断や評価をすることで、身体の心との不調和が生じて誤作動が生じ、それが肉体面の症状として現れる。これは判断グセによる弊害ともいえる。

身体と心の調和を保つためには、まずは「頭の心」で考える判断グセ、評価グセに気づくことである。そして、その判断グセをすればするほど身体と心の不調和が生じ、身体と心の一体感がなくなり、悪循環を繰り返すということを認識することが大切である。

もう少し突っ込んでいうと、「ポジティブ思考」、つまり、「いいイメージ」や「前向き」に考えるようにというようないわゆる「プラス思考法」にも矛盾がはらんでいる。メンタルトレーニングやスポーツ心理学の世界では、ネガティブな思考を排除して、常にポジティブな思考を取り入れるべきだと説いていることが多いようだ。

このポジティブ思考は一時的には効果を現す場合もあるようだが、長続きはしない人が多いようだ。その理由は様々だが、このポジティブ思考には常に良いか悪いかを判断し評価する基準が存在している。すなわち、その裏返しにネガティブ思考が隠れているのである。

つまり、頭の心で良いも悪いも判断や評価をし過ぎることで、身体で感じる感性的な心が同意せずに筋肉系の誤作動を生じさせて、イップスや関節痛などの症状を生じさせてしまうのである。

では、どのような心構えをすればベストなパフォーマンスができるのだろうか?

まずは、自分が望む状態を視覚的にイメージできることが理想的である。理想の状態を理屈的に頭の心で創るのではなく、身体の心(本当の心)にしっかりと寄り添って、感性的にイメージを創ることが大切である。

次に理屈ではなく感覚的に身体の心(本当の心)に全面的な信頼を寄せること。理想の状態に近づくプロセスでの失敗や成功もすべて学びとして受け止める。

最後に良い悪いの価値判断は交えずに、現実に何が起きているのか、そのありのままの事実を理解して客観的にとらえることが大切である。

「無我夢中」、「ゾーン」、「ピークパフォーマンス」という言葉があるが、それらに共通しているのは、判断や評価がない状態、すなわち、「頭の心」と「身体の心」が一体となった心身一如の状態なのである。

心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)を使っている治療者は「頭の心」と「身体の心」の不一致を検査できる専門家でもある。この「意識」と「無意識」のこころが創り出す不一致による誤作動が明確に特定できなければ、イップスや他の慢性症状は本質的には改善されなといっても言い過ぎではないだろう。

2015年1月12日月曜日

2015年度心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)PCRT

お陰様で心身条件反射療法(ニューロパターンセラピー)研究会は、今年で10周年、12月には50回目を迎えます。これもひとえに熱心に参加して下さった臨床家の先生方のお蔭だと心より感謝申し上げます。

本研究会は臨床現場から始まっていますが、最初の動機は、「治る人と治らない人の違いは何か?」という臨床家であれば一度は考えるシンプルな問いかけから始まりました。そして、同じような症状で、検査結果と施術法が同じでも、期待通りの結果がでないことがたまにあります。何がその違いを生じさせているのか?など、正面からその本質を追及してきました。


主に脊髄、脳幹、小脳への反射系への神経学的アプローチによって多くの治療効果が得られます。しかしながら、「潜在的感情」や「信念、価値観」、さらには「意味記憶やエピソード記憶」に関係する脳の学習記憶による誤作動は少なくはありません。

特に症状を繰り返す慢性症状に関しては、単に反射系へのアプローチを主にしたハード面への調整法では、本質的な症状の改善につながらないことが多いのではないでしょうか。

脳の複雑性から考えても脳幹、小脳を主にした反射系のみならず、大脳辺縁系に関係する感情や大脳新皮質に関係する信念、価値観、さらには意味記憶やエピソード記憶へのアプローチは重要であり、PCRTはそのような総合的視点に基づく治療法です。

多くの施術法が主張する因果関係の多くは、構造理論が主体となり、身体の一部分、あるいは複数に問題がある。もしくは、位置的、あるいは機能的に問題があるから症状が生じていると考える傾向にあります。

PCRTの因果関係の捉え方の特徴として、「関係性」と「学習記憶」に注目します。「身体内での機能的関係性」、「身体と外界(環境)との関係性」、「身体とメンタル系との関係性」、「身体と栄養との関係性」、など様々な関係性、ならびにその関係性によるパターンの「学習記憶」に因果関係の焦点を当てます。


施術のアプローチをする際には、身体や五感情報、刺激、物質を含めた様々な「情報」をエネルギー的にとらえて、メンタル系を基軸に、神経系、エネルギー系、五感適応系に分けて、患者様が抱える一人一人のニーズに応じて、オーダーメイドでアプローチを行います。

専門家という差別化が難しい今の時代に、PCRTの治療者は、慢性症状、とくに脳(心)と身体の関係性による学習記憶の誤作動を治療する専門家として、ますます社会に注目される時代になってくるでしょう。

10年の節目を迎えPCRTを振り返りますと、「臨床活動」から始まって、「教育活動」がかなり充実してきたように思います。これからはさらにPCRTの認知度を社会に広めるためにも「研究活動」の種をまきながら、社会に貢献できるように皆様とともにコツコツと育てていくことができればと願っております。

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

尚、12月のPCRT研究会では10周年を記念してシンポジウムを計画していますので是非ご参加ください。重ねてよろしくお願い申し上げます。

2015年1月4日日曜日

明けましておめでとうございます。

明けましておめでとうございます。

昨年12月1日、お陰様でファミリーカイロは20周年を迎えることができました。

これもひとえに皆様方のご支援の賜ものだと深く感謝しております。

20年を振り返りますと、地域の方々をはじめ、多くの人に支えられて、今日まで成長させていただいたとつくづく思います。

ここまで育てていただいた本当にたくさんの方々に、少しでもお役に立てる治療院であり続けられますよう今後もさらに精進していく所存です。

また、2001年度から始めたセミナー・研究会活動も14年目を迎え、2013年度からライフコンパスアカデミーとして部門が統括されました。

今後も「臨床」、「教育」、「研究」の三本柱を軸に更なる発展を目指しながら成長し、微力ながら貢献できることを願っています。

今年も目の前にある様々な出来事を「学びの種」と受け止め、「喜びの花」を咲かせてまいりたいと思います。

どうぞよろしくお願い申し上げます。