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2021年8月19日木曜日

器質性疾患と機能性疾患についての因果関係


 器質性疾患と機能性疾患についての因果関係について解説します。器質性疾患とは身体の臓器そのものに炎症や腫瘍などの構造異常があり、その結果として症状がでてくる病態をいいます。病院で検査を行えば症状に直接的につながっている構造的な異常がみつかることがあります。だだし、椎間版ヘルニアなど構造異常が検査で見つかっても、それが直接的に症状につながらないこともあるので注意しなくてはなりません。 


その一方で機能性疾患とは、自覚症状に関係する臓器などの構造的異常がないにもかかわらず、自覚症状がある病態をいいます。車で例えると、車の骨組み部品に損傷があって
それが原因で問題が生じている場合を器質性疾患、その一方で車の電気系統やコンピュータ制御に問題がある場合は、電気信号の問題なので機能性疾患になります。機能性疾患の多くが脳や自律神経系の信号の誤作動によって、筋肉系や臓器系が本来の機能を発揮できないときに生じます。

 

機能性疾患は脳や神経系、気の流れなどの目には見えない信号の問題なので、画像診断などを判断基準にする病院では少し苦手な疾患になるかと思います。

 

これらの器質性疾患と機能性疾患を治すために大切なことは、その原因を知ることです。様々な問題を引き起こす症状には、原因があります。原因があっての結果であるという考え方は大切です。

 

病気や症状を引き起こす原因を大きく分けると、外因と内因があります。外因とは、事故や怪我などで異常な外力が身体に加わった場合、身体に合わない物を食べたり、感染症などのいわゆる毒が体内に入ったりした場合などは器質性疾患を生じさせます。

 

一方、内因とは心理的作用と免疫力や外界との適応力です。心理的作用といっても単純に心の病や精神的な問題があるというわけではありません。心の信号は常に動いています。特に身体の機能、働きに影響を及ぼすのは無意識の心の信号です。例えば、恐怖などの緊張があると足が震えるというのは多くの方が知っていると思います。この現象は心の信号が神経系、さらには筋肉系に作用して無意識的に足の震えを引き起こすわけです。意識的に、大丈夫大丈夫と思っても、無意識は正直なので心の奥で恐れを感じて足が震える訳です。このように無意識の心の信号は脳、神経系や気の流れなどの信号に影響を与えて、身体の働きに異常をきたします。

 

また、人間には本来、免疫系という機能が備えられており、病原体・ウイルス・細菌などの異物が体に入り込んだ時にそれを見つけだして、体から取り除くという働きをしてくれます。この免疫系の働きも神経系や内分泌系と同様に弱ってくると病気や症状を引き起こしやすくなります。

 

この外因と内因はどちらか一方というよりも、オーバーラップして原因となり、外因によっては器質性疾患を生じやすく、器質性疾患が生じると、同時に機能性疾患も生じます。

 

内因によっては機能性疾患を生じやすく、それが長引くと器質性疾患を生じさせます。器質性疾患と機能性疾患も病気や症状があるときにはオーバーラップした症状を生じさせるのがほとんどです。

 

以上が器質性疾患と機能性疾患に関する、原因と結果の関係性に関する解説でした。

 

2021年2月16日火曜日

「配線理論」から「電波理論」への進化

 「脳を司令塔とする神経系は身体の働きをコントロールしている。だから神経系の働きを整えて健康を維持しよう。」という考え方は理にかなっている。その考え方に基づけば、神経系の解剖や機能の知識は大切になってくる。言い換えると、神経系の知識があればあるほど、体の働きを調整するエキスパートのようにも思えてくる。長年、臨床現場でさまざまな症状を抱えている患者さんたちの施術をしていると、確かに神経系の知識は必要だと思う。

 しかしながら、神経系の解剖、機能に基づく知識だけでは辻褄が合わないことに多々遭遇する。例えば、膝の慢性的な痛みの患者さんで、神経学的に考えると膝の働きに関係する神経末端の神経受容器、その上位レベルの脊髄神経、さらにその上位レベルの中枢神経という神経経路、すなわち、神経の電気信号が流れる配線に沿って問題があるのではないかと考えるだろう。

 

確かにその配線理論に基づいて、神経系の流れに沿った部位を活性化(施術)することで、神経系の機能が改善され、症状が改善されることがある。しかし、その神経系の機能の異常を引き起こす原因は何かと考えると、その配線理論では辻褄が合わない。多くの臨床家にとって分かってはいるけれども悩ましい課題である。それは一般的にいえば、目には見えない「ストレス」である。

 

長年、神経機能異常を引き起こす原因を追求し続けた視点で言えば、脳から発する無意識の信号だといえる。別の言い方をすると、配線理論ではなく電波理論である。関節の機能に異常を引き起こす電波信号が条件付けされ、脳に記憶されているが故に慢性症状を引き起こしていると考えられる。この電波理論は、私が長年研究してきた心身条件反射療法において、「原因と結果」という観点において臨床現場で辻褄が合う理論である。

 

その理論の証明はどのようにするかと言えば、無意識の誤作動記憶を認識して調整するという実例を多くの症例で証明するしか今のところはない。このような施術を知らない治療者にとって不思議な治療法だと思われても致し方ないが、最先端の科学、量子力学、量子脳理論などでも「電波理論」「波動理論」へと進化し続けていることを考えれば不思議なことではないだろう。

 

昔は配線でつながる電話機だけだったが、今ではあらゆるものが電波でつながる時代である。そのように考えると、身体の働きも、神経系の配線機能だけでなく、電波機能でつながっているという考えに基づいて施術をすることが大切になってくる。長年、施術法の研究を継続していく過程で、神経系を深く学んだ時期があったが、やはり、臨床現場ではいわゆる神経系の配線理論には限界を感じる。このような考えに行き着くのには神経学をある程度学んできたが故に言えることだが、今後も脳、無意識、波動、そのような目には見えない電波信号、波動信号を検査して、調整する施術法を進化させていきたい。

 

2020年12月1日火曜日

身体を害する “ストレス”の正体

“ストレス”が身体を害するというのは、多くの人たちが知っています。胃の不快感や胃痛などで病院を受診すると、通常は対症療法的に薬を処方されます。「胃痛の原因は胃粘膜の炎症、あるいは潰瘍から生じているようです・・・」ということで胃酸を抑える薬を処方されるかもしれません。ここで、「なるほど」と思う人と、「胃の炎症や潰瘍の原因はなんですか?」と質問する人に大きく分かれます。

 

多くの人は身体に不調があると、「内臓から生じているのではないか?」と考える傾向があります。確かに内臓の問題が体表の症状として現れることがあります。しかし、その内臓が傷つく原因は何でしょうか?恐らく多くの方がご存知の様に“ストレス”です。ガン、血管障害、心疾患、糖尿病などの慢性疾患の多くが“ストレス”が関係していると言われており、怪我や事故などと異なって、自覚がないまま徐々に病気が進行していくのが特徴です。

 

病院の検査で構造的な異常、数値的な異常が発見された場合、構造的な異常を修復するか、あるいは、数値的な改善を図るため薬が処方されます。多くの人が早期に発見され、このような身体の構造や機能を調整することで症状が改善方向に向かい安心されます。しかしながら、慢性症状の元の原因となる“ストレス”が影響しないように本質的な予防のための治療にまでは考えが及びませんし、そのような“ストレス”の治療があるということすら知らない方がほとんどです。

 

当院ではストレス”と身体の機能異常の関係性ついて、臨床現場で長年研究してきました。そこで分かった身体を害する“ストレス”の正体は何かということです。特徴としては以下の内容が含まれます。

 

1.      身体の機能(働き)に誤作動を生じさせる目には見えない信号

2.      意識している明らかな内容ではなく、無意識的で曖昧な内容

3.      意識と無意識が葛藤するような内容

 

つまり、身体を害する“ストレス”とは、自覚し難い内容で、当院で行っている様な、“身体に聴く検査”でないと分からないということです。

 

上記の様な慢性病になっていなくても、身体が発する症状は、何らかの身体の訴えであり、慢性症状へ向かうシグナルかもしれません。“身体に聴いて”検査することで、“ストレス”の正体を知り、慢性病の予防につなげていくことが肝心です。当院では患者さんの要望に応じて、身体に聴いてストレスの内容を明らかにして、ストレス信号が身体を害さない様に調整させていただいております。ご要望がありましたらお気軽にご相談ください。




2020年11月5日木曜日

心を込めて治療する

毎日の臨床の現場で自分がどれだけ患者さんと正面から向き合って「心を込めて」治療をしているだろうか・・・・先ほど致知の雑誌をめくっていたら、「気持ちを込める」「心を込める」「という言葉が目についた。このことに関して自分の臨床を振り返ると反省することが多々ある。

 

随分前のことではあるが、ある患者さんから「先生、今日は“念”が入っていますね・・・」と何気なくコメントをいただいたことがあった。

 

そのことは私に大きな気づきを与えていただいたので、私のブログにも投稿した。https://yasuiyukinobu.blogspot.com/search?q=

 

毎日の臨床で心を込めているつもりになってはいるが、客観的に振り返ると、セミナーの準備に追われていたり、自分の治療技法ばかりに目を向けたりして患者さんの心に寄り添っていないこともある。すなわち心を込めて向き合っていなかったかもしれないと反省する。

 

では、「心を込めて治療する」とはどういうことなのか?と考えると、簡単には言葉で表すことはできないが、常に心を込めるということは大切だと思う。

 

開業して駆け出しの頃は、時間を忘れて結果を出すことにこだわっていた時期があった。患者さんも増えて、予約制である以上は、他の患者様にご迷惑にならない様に時間内に施術を終えなくてはならない。

 

そこで、10年ほど前から時間制という「ルール」を明確にして、患者さんに理解を得て、時間内に施術を追える様にしている。メンタル系に関係する患者さんには二枠の予約時間を取っていただくようにしている。

 

患者さんの中には時間など関係なく症状が取れるまでとことん時間をかけて施術をするべきだと考えている方もおられるだろう。患者さんである自分が苦しんでいるのだからとことん時間をかけるのが治療者のあるべき姿だと期待している方もいるだろう。

 

そうかもしれないが、開業している治療者は無償で治療を行っているわけではない、有償というルールの中で治療を施している。そのことを理解していただいた上で、「心を込めて治療する」という有料のサービスが成り立つ。

 

時折、思う様な結果が出てこない患者さんには、天に導いてもらうために祈りを捧げることもある。短時間ではあるが、それは施術以外のところで遠隔的に心を込めるということである。時間を掛けることが「心を込めている」と感じる方もいるかもしれないが、一瞬でも純粋な気持ちで心を込めることは大切だと思う。

 

「心を込める」ということは、治療や対人関係に限らず、全てにおいて大切なテーマだと思う。日常生活の中から常に実践できる様に心がけたい。

2019年12月14日土曜日

「つながり」と「関係性」でとらえる力

先日、NHKのダビンチ・ミステリー(第2集)という番組を見ました。モナリザの絵画で知られているダビンチは、医学、生物学、物理学、工学・・・あらゆる学問に精通していた「万能の天才」と言われています。そのダビンチの思考を分析するために膨大な「手稿」を世界から入手してAI解析を行い、ダビンチの「脳内」を再現するような広大なプロジェクトが紹介されていました。その中で、ダビンチを研究している心臓弁手術専門の心臓外科医は、ダビンチが描いた心臓の内部を現した解剖図に感銘を受けたといいます。その解剖図には心臓の内部の血液の流れが描かれており、血流の渦の回転力で心臓弁を閉じる機能まで解説しているのです。それは500年前に描いた解剖図です。心臓弁を閉じる仕組みは最近のコンピュータのシュミレーションによって、血液の流れを解析することで心臓弁の箇所で渦を巻いてその勢いで弁が閉じられるという仕組みが明らかになったとのことで、どのようにしてダビンチが最新の分析器もない時代に、その弁を閉じる仕組みが血流の渦によって引き起こされているということが分かったのでしょうか?

番組では500年前の分析機器がない時代に、ダビンチがどのように心臓弁を閉じる原理を知り得たのかということが紹介されていました。その秘密をAI解析してみると、ダビンチは「水」に対して異常なこだわりがあったことが分かりました。彼は川の運河を観察し、渦が生じる仕組みを何度も実験し、解剖によって動脈で再現したのではないかと言われています。水は血液と結び付き、生命という根源的な関心へとつながっていく様子が示されていました。まさに水こそが地球を循環しており、世界をつないでいる大切な生命の源になる。理論物理学者・フリチョフ・カプラによると、「世界の全てを知りたいと願ったレオナルドにとって水こそがその象徴だったのではないか」と述べています。

ダビンチは「自然には法則のない結果は何もない」、「法則を理解せよ」と記述しています。フリチョフ・カプラによると、・・・『ダビンチが膨大な知識に基づいて、複雑な仕組みを全体の「つながり」を通して考える発想を持っており、それは、すなわち「システム思考」で物事を幅広く考察し、体系的に考えていたのではないか。」「光学、解剖学、認知科学、存在論など科学や哲学、さらには芸術を融合させ、全ての知識がインターネットのように分かっていたのではないか?」・・・と述べています。ダビンチは科学と芸術の領域を行き来して、さらには哲学をも融合させていたようです。これは、カイロプラクティックの創始者であるDDパーマーや2代目のBJパーマーの考えに通じていますが、もしかすると、ダビンチの影響を受けていたのかも知れません。

番組ではダビンチが幼少の頃から「自然」をくまなく観察していた様子が紹介されていました。そのような「自然」に対する観察力が土台となって、数学や幾何学などの様々な知識とつながり、様々な発明発見につながったのでしょう。「自然」という本質を土台にすることは、様々な法則につながっているようで、「人間の本質」も「自然の本質」につながっているように思います。番組の最後に、・・人類の複雑化、グローバル化が進む現代において、「細分化」する技術では対応できない問題が生じている、これからは「つながり」から世界をとらえる力が求められるのではないか・・というコメントが心に残りました。この番組を通じていろいろなことを考えました。本質的な治療法を長年研究してきた治療家として、「細分化」でとらえる機械論的な診方に限界を感じ、「つながり」、「関係性」でとらえる有機論的な診方へと方向転換した20年以上も前のことを思い出しました。改めてこれまでの臨床研究が意義あるものであり、時代の流れに沿ったテーマであることを再認識し、これからもこのテーマを深めていきたいと心に響くものがありました。


2019年12月7日土曜日

「自責」と「他責」どちらが健康的でしょうか?

人は様々な「ストレス」に遭遇しながら生かされています。「ストレス」と聞くと、精神的にネガティブなことだと思われますが、ポジティブなストレスもあります。それは、人それぞれに捉え方、解釈の仕方によって受けるストレスがネガティブになったりポジティブになったりするからです。例えば、あるプロジェクトの責任者に任命された時、Aさんは、「責任者として様々なことを犠牲にして、大きなストレスを抱えなくてはならない・・・」と悲観的に捉えるかもしれません。その一方でBさんは、「このプロジェクトを進めていく過程で、多くの学びを得て、将来の成長のための糧にしよう・・・」と楽観的に捉えるかもしれません。

人間関係において、多くの人が「ストレス」を経験します。自分の部下やパートナーに、期待しているような行動がみられない時、あるいは、自分の上司や周りの人たちに期待しているような評価をしてもらえない時などは「ストレス」を感じやすいと思います。様々な人間関係において、「捉え方」「解釈の仕方」は様々です。大きく分けると「他責」にするか、「自責」にするかです。他責の場合、「自分は正しい」「自分は被害者だ」ということを誰かに分かってほしいということに意識が向いてしまう傾向にあります。一方、自責の場合、「自分のどこに問題があったのか・・・」「自分の何がそのようなことを引き寄せたのか・・・」というような意識が働く傾向があります。

さて、人間関係や組織の関係性において、「他責傾向」の人と「自責傾向」の人では、どちらの方が発展的で、成長への方向へ進みやすいでしょうか?また、どちらの方が健康的でしょうか?ある問題が生じた時、「他責傾向」の人は、問題を解決するために、責任や原因の所在を他者や環境に求めていきます。そうすると、他者が行動を起こさない限り問題は解決しませんし、自分自身が行動を変える必要性は無くなります。そして相手を非難するだけの傍観者になるでしょう。その一方で「自責傾向」の人は、自分の何がそのようにさせたのか?自分の何がそのような問題を引き寄せたのかと考え、自らを変えようとして行動に移して問題解決へと導いていきます。誰がみても99%相手の責任だとしても、「目の前にある課題は、自分の何かが引き寄せた結果であると解釈してその課題に向き合う人もいます。

「自責傾向」の人と、「自虐傾向」の人とは性質が異なります。「自責傾向」の人とは目の前の問題や課題を自分自身の学びや成長の糧にする人です。「自虐傾向」の人は、自分を卑下して、他者からの哀れみを引き寄せようとする傾向のある人です。もしも、それが長期的な心の「クセ」になると、人生は明るいでしょうか?「他責傾向」の人と「自責傾向」の人ではどちらが人生をポジティブに豊かにしていくでしょうか?あなたは、「他責傾向」や「自虐傾向」の人のそばにいたいですか?それとも「自責傾向」の人とともに人生を歩んで成長をしていきたいですか?

人生において健康を維持することはとても大切です。これは、多くの患者様の健康をサポートさせていただき感じることですが、人生に豊かさを感じるのは、様々な問題を自分の課題として向き合う「自責傾向」の人達です。人生の中で「他責」にしたり、「自虐」になったりする経験は誰もがすることかも知れません。私自身も長い人生経験を通じて、「他責」にすることが多々ありました。今でも時折他責にしてしまうこともあります。振り返るとそこには反面教師として学ぶことはあっても問題解決や自分の成長にはつながりませんでした。やはり、自分自身が変わることで現状に変化が現れていました。これは頭で理解しても何も変わりません。実際に行動に移すことで知らず知らずのうちに変化が生じるものです。

恐らく、多くの人は「自責」で考えた方が自分の人生や健康にとっていいとは分かっていても、時には他責的な発言をして共感を示してほしいと思うことことがあるでしょう。私たちはそのような患者様の気持ちをできるだけ理解し、耳を傾けるようにしています。そして、患者様が「自分の気持ちが理解されている」と十分に感じられると、徐々に自責の思考へと変化していく方も少なくはありません。その変化は内容によっては長い期間を要する場合もありますが、私たちは患者様の気持ちを徹底的に理解し、寄り添いながらサポートすることが大切だと考えています。

人生は山あり谷あり、人は人とのつながりの中で生かされています。もしも、現在抱えている人間関係などの問題や課題が「他責傾向」の罠にはまっているのであれば、今一度ご自身の思考パターンや行動パターンを見つめ直す機会かもしれません。他者はコントロールできません。コントロールできるのは自分自身です。「自責傾向」へとシフトして考えることは、人生を豊かにし、健康を維持していく上でとても大切なことになると思います。さあ、「自責」「他責」、あなたのどちらの傾向なのか今一度見直してみましょう。

2019年11月28日木曜日

「健康」と「運気」の安定

先日、田坂広志氏の最新の著書、「運気を磨く 心を浄化する三つの技法」という本を読みました。当院で行っている心身条件反射療法(PCRT)という施術法の根底にある「考え方」が如実に表された内容だったのでとても感銘を受けました。『なぜ、ポジティブ思考が、逆効果になるのか』、並びに『「良い運気」を引き寄せられない本当の理由』が説明されていました。田坂氏によると、いくらポジティブ思考でポジティブなことを表面的に考えていても、無意識的にネガティブな想念がある以上「良い運気」を引き寄せることはできない・・・そして、本当に「良い運気」を引き寄せたいと思うならば、心の中をポジティブな想念で満たす前に、何よりも、心の中に数多く存在するネガティブな想念を消していかなければならない・・・と述べています。

つまり、心の奥にある無意識的なネガティブな想念を消してからポジティブ思考をしなければ逆効果になってしまうということです。このことは、当院で長年研究してきた本質的な施術法の原理原則に通じるものがあり、慢性症状の多くが、心の奥に隠れている無意識的な想念に関係しており、その想念を認識し、書き換えることで症状が改善し、さらには健康を取り戻すことで「運気」も改善している様子がうかがえる実例を数多く経験させていただいているので、田坂氏が伝えたいことはよく分かります。また、田坂氏は科学研究者としての立場から「運気」というものを明らかにしたいと考えており、そうした視点からの「科学的仮説」についても紹介しています。

私は「健康」を研究する臨床家として、長年多くの患者様の健康をサポートさせていただき、「健康」=「安定した運気」というような感覚を持っています。「不健康」=「不安定な運気」のときで、その原因は田坂氏が述べているように、無意識の世界が「ネガティブな想念」で満たされていることが多いようです。「幸せになりたいと願いながら、不幸を引き寄せる人」というテーマでは、心理学者の仮説を引用して、その原因は自分でも気づいていない無意識の世界が自分の行動を支配してしまい、人生の選択を誤らせてしまうことがあると述べています。

多くの人々は何事も「意識」でコントロールしていると思いがちですが、実は意識する以前に「無意識」にコントロールされているのです。このことは、近年、科学研究者によっても述べられています。有名な心理学者が共通して語っている無意識の世界を要約すると以下の通りです。

第一 「無意識」は「意識」の世界からは明確に自覚できない。
第二 「無意識」の世界は力強く、「意識」の世界に大きな影響を与えてしまう。
第三 「無意識」の世界に働きかけて、それを意識的に変えることは容易ではない。

当院ではこの「無意識の世界」を十分に踏まえて、生体反応を利用した「体に聴く検査」を行って、「無意識の世界」を探索します。そして、健康を阻害している「無意識の想念」を認知してもらい、それを書き換える調整を行っています。その結果として症状が改善し、健康を取り戻すことができます。心と身体の関係性、「心身一如」という観点から、慢性症状が心の奥にある「無意識」と関係するということは、頭で理解しても体験しないと信じられないということもあるかもしれません。当院では「無意識の気づき」によって、症状が改善される患者様が多いので、無意識の世界の影響は理解しやすいと思いますし、さらには、その気づきによって「運気」も上向きに向かっているということも合わせてご理解いただければと思います。「無意識の世界」を明確にして「健康」と「運気」の安定を維持していきましょう。

2019年11月21日木曜日

「技」を極める

手技によって行われる施術は徒手療法、あるいはマニピュレーションと呼ばれています。カイロプラクティック、整体、オステオパシーなど様々な施術法があります。アクティベータ・メソッド(AM)もカイロプラクティック大学で教えられているテクニックの一つです。筋骨格系の痛み症状に対しては即効性のある効果的な施術法です。一見シンプルに思える施術法ですが、その「技」には奥深いものがあります。最近ではオンラインによる動画で学ぶこともできるようになっていますが、「技」をマスターするためには、実際に体験し、多くの熟練者の技術をライブで体感することが重要だと思います。「見て学ぶ」ことも大切ですが、その情報「インプット」した後は、実際に行って「アウトプット」し、他者からのフィードバックをもらい「微調整」をすることがさらに大切になります。

「見て」→「体験して」→「フィードバックを受けて修正」この一連の流れを繰り返し継続して、自分なりの「コツ」を掴むことが上達の近道です。「コツ」の掴み所は人それぞれですが、それは「体験」を通じてのみ得られるものなので、マニュアルを読む、動画を見るだけで得ることは難しいでしょう。例えば、AMの下肢長検査のポジション1では、術者の立ち位置、手の当て方、頭上方向への圧の加え方など説明はマニュアルに記載されているので分かると思いますが、踵骨部から頭上圧をゆっくりと加えて、反応下肢側の緩みが感じられるという感覚、軸圧刺激によって神経関節機能異常の神経学的反応を引き出す「コツ」は実際に体験しなければ分からない「感覚」だと思います。これは、単にどちらが短いとか長いとかの単純な「見方」ではありません。神経学的生体反応の「感覚」をご自身の臨床現場で繰り返し体験することで、自分なりの「コツ」として掴めるようになるのだと思います。

まずは、「基本の型」を習得し、次に実際の「生体反応」を読み取る「技」を習得します。もしも、反応が読み取れる段階に入ると、どの部位の関節、あるいは筋肉に神経学的機能異常が生じているか否かが分かるようになりますので、結果的に筋骨格系の痛みなどの施術効果が出せるようになります。ただし、しっかりと安定したコンタクトが出来ていることなどの臨床的なスキルも当然のことながら必須条件になります。このコンタクトの仕方も、教科書的には〇〇パンドという数字的な記載はありますが、同じ年齢の大人でも体格は異なりますし、筋の緊張度、過敏度は人それぞれに異なります。アクティベータ器による圧の加え方において、科学的なデータから導き出された基準圧を参考にすることは必要ですが、臨床では臨機応変に目の前の患者に合わせてコンタクトすることが大切です。このことも実際に「経験」を積み重ねることによってのみマスターできることだと思います。

ある程度のAMの「技」がマスターできると、患者さんにも喜ばれるようになり、治療家としての自信がついてきます。治療家としての自信は大切なのですが、中途半端な「技」になると、我流へと傾いて、偏った反応でしか読み取れなかったり、偏ったコンタクトによって、引き出せるはずの結果が出せなかったりというような状態に陥ることもあるようです。これは、ある意味自信過剰になって、知らず知らずのうちに自分の「技」の盲点に気づかないままになっていたといえるでしょう。そして、結果が引き出せない原因を自分の技量ではなく、テクニックのせいにしてしまうのです。厳しいことを言うようですが、これは私が20年以上アクティベータ・メソッドを教える立場を継続させていただいた経験に基づく見解です。もっと粘り強く真摯に「技」を極めて欲しいと願います。真摯に継続すれば必然的に身に付く「技」です。そして、ある程度の「技」を極めれば、治療家としての一生の財産になると私は思います。

それでは、次回のセミナーで皆さんと共にさらに「技」に磨きをかけていきたいと願っております。

2019年10月23日水曜日

痛みはどこから?骨、靭帯、軟骨からの痛み

腰痛や関節痛の痛みはどこから来ているのか?痛みの症状を改善させるためには痛みに関連する部位の特定が必要です。痛みの種類は発生源から分類すると3つに分けられます。まずケガや火傷のときの痛みのように、その部位に炎症が生じ、痛みを起こす物質が発生して知覚神経を通じて脳で痛みを感じる「侵害受容性疼痛」と呼ばれる痛み。次に構造的な異常が見えないにもかかわらず痛みが生じている「神経障害性疼痛」と呼ばれる痛み。そして、3つ目は、「侵害受容性疼痛」にも「神経障害性疼痛」にも当てはまらず、「心因性疼痛」と呼ばれている分類の痛みで、これは心の問題というよりも脳の認知の異常によって生じる痛みです。その問題の本質は心(精神機能)ではなく、「脳(無意識と身体との認知機能)」にあると考えられます。

そして、多くの慢性症状は、これらの痛みの発生源が複合しています。症状の種類や慢性化の程度などによって「神経障害性疼痛」の問題の度合いが大きかったり、あるいは「脳(無意識と身体との認知機能)の問題の度合いが大きかったりします。慢性症状で一時的に症状が改善されても、すぐに振り返す場合には、特に「脳(無意識と身体との認知機能)」に原因が隠されていることがほとんどです。先日もある膝関節を抱えた患者さんで、振り返す原因を検査していたところ、単に関節を構成する筋肉や関節だけでなく、半月板や前十字靭帯そのものの誤作動記憶が関係しており、その誤作動記憶を調整することで症状が改善された事例があり、改めて無意識と身体との関係性による誤作動記憶、すなわち脳の認知に関係する領域が痛みに深く関わっていたことを確認しました。

通常の医学的な視点からすれば、筋肉や筋膜に分布する神経学的機能が痛みに関係する発生源になると考える傾向にありますが、神経分布の少ない靭帯や軟骨も慢性症状の痛みの発生源になっており、それは脳の誤作動記憶に深く関係しています。筋肉の機能異常による痛みに関しては、マッスルテストによって比較的容易に検査することができますが、靭帯や軟骨、骨などはそれ自体での動きがない組織ですので、エネルギーブロック(EB)の検査には、特殊な検査をしなければなりません。その検査法はPCRT上級編でご紹介させていただきます。

この検査法をマスターできると、慢性的な関節痛の隠れた痛みの発生源の特定が容易にできるようになり、慢性症状の改善度がさらに高まると思います。次回のPCRT上級編では、骨、軟骨、靭帯からの痛みの発生源を特定し、調整する検査法に加えて、ジストニアやイップスなどの調整法など、上級でしか学べない内容をご紹介させていただきます。皆様のご参加を楽しみにしております。

2019年9月23日月曜日

「How to」を超えたさらなるステップ アート=直感力=人間力

徒手療法を施す施術者が施術法を学ぶにあたって、多くの治療家は「どのようにするのか?」という手順、技法に目を向けます。次にその背景にある「なぜそうするのか」という理論や哲学、そして、その理論に科学性があるのか、あるいは技法に客観性があるのかということに注目します。

多くの施術者が同じ施術法で同じ結果を出すためには、「どのようにするか?」(How to)を統一する必要性があります。そして、「なぜそうするのか?」(Why)を同じように説明できなければなりません。現代医療は科学という客観的な検証に基づいた医療が主流ですので、客観性があると多くの患者さんが信頼を寄せてくれます。

様々なカイロプラクティックのテクニックがある中で、アクティベータ・メソッドは半世紀以上にわたって同じ手法と理論を継承し続け客観性を重視してきました。そして、それを活用している世界中の多くのカイロプラクターが、腰痛や関節痛などの筋骨格系症状に対して自信を持って施術を行っています。

効果を引き出すためには、神経関節機能障害の神経生理学的エラーを感知できる下肢長検査の熟練が必要不可欠です。また、調整する際の適切なコンタクトと調整法のタイミングの技法も“コツ”があり、それは教科書だけでは学べない内容が多く、その“コツ”をセミナーで習得する必要があります。

効果を引き出すためには、上記に述べた「How to」が必須条件になりますが、機械の修理とは異なって、心を持った人間を対象にしているので、同じような腰痛患者でも人によって微妙に異なります。言葉の掛け方、検査の仕方、説明の仕方など、患者一人一人に合わせて接し方を変えなければなりません。それは、言葉では表しにくいアートの領域であり、経験から導き出される「直感力」や「人間力」が必要になります。

そのような臨床における施術者としてのアートの領域は経験を積んでいく必要性があります。単に「どのように」(How to)だけを習得すればそれで終わりではなく、「なぜそうなるのか」(Why)や臨床で大切な「直感力や人間力」を深める必要性が求められるでしょう。

私はそこに治療者としての奥深い醍醐味があると考えています。毎日の臨床において、本当に一人一人の患者さんの立場になって、その方の未来を考えて真摯に向き合っているのか?患者さんのニーズに幅広く応えることができる治療者になるための努力を怠っていないのか?当たり前のことではありますが、日々問いかけるように心がけています。

2019年9月11日水曜日

施術に“魔法”や“マジック”はない?

代替医療の治療者が施術をして驚くような結果がでると、施術を受けている人やそれを見ている人は“魔法”や“マジック”のように感じることがあります。また、施術者自身が「“魔法”の〇〇法」というように、自分の施術や手法を宣伝する目的でそのような言葉を使って注目を集めようとしたりします。自然治癒力を引き出す施術法に魔法やマジックが本当にあるのでしょうか?

私は長年代替医療の世界にどっぷり浸かってきた人間です。「なぜ、治るのか、治らないのか」を探求し続けてきました。代替医療の専門教育を長年受けてきました。理論や理屈も大事にしてきましたが、何よりも臨床現場における結果に興味を注いできました。代替医療の中でも本場の米国で発祥したカイロプラクティックには大きな影響を受けています。学生時代から様々なカイロプラクティックのセミナーを受けました。若い頃に遭遇した米国のカイロプラクター(治療者)の施術を目の当たりにして、最初は“魔法”というよりも半信半疑で見ていたことを思い出します。

そして、研修を重ねるにつれて、臨床現場で自分でも同じような結果が得られると、そこから「なぜ、そのような結果」が得られるのかという「本質への探求」が始まりました。捻挫で足を引きずる、あるいは腰痛のために車椅子で来院されるような重度の症状を抱えた患者が、普通に歩いて帰ることができるなどの結果がある一方で、結果が伴わない患者さんに遭遇することもあります。「その違いは何か?」という本質的な因果関係への探求は現在でも大きなテーマです。

魔法のようにも思える施術法の本質は何か?そもそも、なぜ魔法のように感じるのか?それは多くの人々の考え方、受け止め方が現代医学の「科学信仰」に基づいているからです。代替医療の多くは特に目には見えない「生体エネルギー」を対象にして施術を行っているので、そのような施術で効果が現れれば、「あら不思議」、「魔法みたい・・」となるわけです。折れた骨をつなぎ合わせる、飛び出た軟骨を取り除く、あるいは詰まった血管の通りを良くするなど、目で確認できる施術は何の不思議もありません。当たり前の治療になります。

代替医療の中で、自然治癒力を引き出すことを目的に施術を行っている治療者は、多かれ少なかれ目には見えない生体エネルギーを基本に施術を行っているはずです。もしも、そうでなければ、それは現代医療の考え方に基づいて目に見えるモノを対象に施術している可能性があります。現代医学の医師と同じ目線で症状を捉えているということになるかもしれません。もしかすると、現代医学に基づいた考え方だからこそ安心感を感じ、あるいは当たり前の考え方として感じる人も少なくはないかもしれません。言い換えると、現代医学とは異なる考え方で症状の因果関係を説明されると“怪しい”ということになり、たとえ施術で症状が改善してもそれは“不思議”となるのかもしれません。

多くの人たちにとって現代医学の考え方は“当たり前”になっています。そして、その考え方から外れた考えで施術効果が現れると“魔法”や“マジック”のようだとなるわけです。もしも、目には見えない生体エネルギーによって、私たちの身体の働きが調整されているのだということが当たり前の考え方になれば、代替医療の施術は至極当たり前の療法になるのですが、科学が主流の現代医療の世界において、目には見えないモノを信じるということはまだまだ難しい課題のようです。

2019年6月14日金曜日

関節痛の施術の本質は何か?


例えば、可動域の広い肩関節や股関節に左右差がある場合、それは、器質的(構造的)なのでしょうか?それとも機能的なのでしょうか?

もしも、その原因が機能的なものであれば、多くの場合、関節の可動に伴って「痛み」などの症状を伴うことが多いようです。

もしも、その原因が器質的なものであれば、骨の変形や筋肉の拘縮などによる構造的な制限によって可動域は制限されますが「痛み」などの症状はほとんど伴ないません。

私たちのような代替医療の治療院に来院される患者さんの多くは、構造的な問題ではなく「機能的な問題」を抱えて来院されていることが多いです。もちろん、患者さんは「機能異常を治してください・・・」といって来院されるわけではなく、病院で治らなかったから来院される方がほとんどです。よって、私たち代替医療の治療者は、病院の医師のような診方ではなく、機能的な問題を分析できる知識や技術をもたなければなりません。

もしも、構造的な問題であれば、病院で明らかになりますが、微妙な機能的な問題の特定は病院では明らかにならないことが普通です。我々の治療院に来院する多くの患者さんは、病院での検査では痛みに関連する原因が見つからないまま、痛み止めや消炎剤などの対症療法を受けて、症状が改善されずに来院されます。

痛みをかばってまともに歩行できないなどの機能異常は病院でも明らかですが、痛みを引き起こしている機能異常の特定までには至りません。病院で改善されない肩関節痛、膝関節痛、股関節痛の患者さんの多くは、機能異常から生じています。なぜ、そのように言い切れるのかというと、臨床現場で多くの関節痛の患者さんを治療させていただいて、控えめに言っても約9割以上の患者さんが、治療後には症状の軽減、消失を体感されているからです。

多くの症例において、症状を伴う関節には必ずと言っていいほどマッスルテストにおいて機能異常が確認されます。施術によって機能異常が改善されると、多くの症状は軽減、消失します。症状の程度によっては炎症症状が強い場合、あるいは痛みの記憶が残りやすいなどで、施術後すぐに改善を感じられない患者さんも少なからずいますが、ほとんどの患者さんが改善を体感されます。

さて、施術では何をしているから機能異常が改善されるのでしょうか?

関節痛を軽減するための施術法はたくさんあります。各種理学療法、鍼灸、カイロプラクティックなど様々な療法がありますが、本質的には何をしているのでしょうか?関節を調節する、循環を良くする、筋肉をほぐす、気の流れを良くするなど様々な目的で痛みのある関節に施術を施すかもしれません。

もしかすると、施術目的など考えずにハウツウ的に施術を行なっているかもしれません。

例えば、「関節のズレを治すために矯正する」という目的をもっている治療者がいる場合、構造的な関節のズレは治せるのですか?もしも、機能的に関節のズレが生じているのであれば、何がそのズレを引き起こしているのでしょうか?と、私は質問するかもしれません。

もしも、「筋肉の緊張や機能異常がから生じています・・・」という答えが返ってきたり、筋肉をほぐす目的で施術をしている治療者がいる場合、「筋肉の機能異常はどこから生じているのでしょうか」と、私は質問をするかもしれません。

もしも、「筋肉の機能異常は神経系の機能異常から生じています・・・」という答えが返ってきたら、その神経系の機能異常はどこから生じていますか?とさらに質問するでしょう。多くの治療者はここから先の答えを持ち合わせていないか、分かっていてもそのための直接的な施術法には及ばないかもしれません。

私は長年の臨床を通じて筋肉の機能異常は、単に神経系の機能異常だけでなく、東洋医学で云われている経絡のエネルギーブロック、さらには神経系や経絡などに関係する生体エネルギーブロックを繰り返し継続させる脳の誤作動記憶(プログラム化)だと確信しています。生体エネルギーブロックや記憶は電気信号のように目には見えない「エネルギー情報伝達」のブロックです。私たちはそのような目には見えない電気信号のようなエネルギー情報伝達のブロックを調整して症状の改善を促しているのです。

また、その「エネルギー情報伝達」の信号は、肉体内の働きだけでなく、心の動きも含まれます。意識的にも無意識的にも心が動けば脳や神経系や経絡に電気信号、すなわち「エネルギー情報伝達」が生じます。最近ではストレスが腰痛や関節痛などを生じさせるということは、テレビ番組でも取り上げられています。明らかなストレスが症状に関連することもありますが、多くの場合、症状に関係するような心の問題の多くは無意識的で、普段認識していない心の動きでありその記憶です。

私たちは身体に影響を及ぼすような記憶を「誤作動記憶」と呼んでいます。肉体内の生体エネルギーブロックを消去することで多くの関節痛は改善されますが、慢性的に症状がぶり返す場合は、脳の誤作動記憶の調整が必要です。脳の誤作動記憶の調整に伴って慢性症状も改善されます。対症療法的な施術で改善されない場合は、さらに原因を追求することが必要だと私は常々考えています。そのことが施術の本質を追求することにつながり、延いては患者さんへの貢献につながると信じています。

2019年1月8日火曜日

治せる治療者

新年、明けましておめでとうございます。

昨年はお陰様で学びの多い1年間でした。今年もさらに学びを深め、多くの人の症状改善や問題解決に貢献できるように精進してまいりたいと思います。治療家としての原点を振り返ると、「自然療法で治す」ということを30年以上も問い続けてきた訳ですが、今年も症状を「治す」ということの意味を深く考えながら臨床とセミナーで貢献できるように邁進してまいります。

自然手技療法で「治す」とは、どういうことでしょうか?

薬や外科的手術などを行わない代替医療に携わっている治療者は、患者が本来持っている自然治癒力を高める、あるいは引き出すことを目的に施術を行います。例えば、全身のマッサージをして自然治癒力を高める。足つぼのマッサージをして自然治癒力を高める。また、第一頸椎にだけ刺激を行う治療者達は、そこだけを調整して後は自然治癒力に任せる。あるいは別の言い方でイネイト・インチェリジェンス(内なる自然の叡智)に任せるというカイロプラクティック由来のハイカラな言葉を使う人も最近は多くなってきているようです。

薬や外科的手術などの西洋医学であれ、代替医療の東洋医学であれ、あらゆる療法で効果があるというのは患者自身に自然治癒力、すなわち生命力が本来備わっているからです。死を迎える時が来るまでは、ほとんどの人に自然治癒力、生命力が備わっています。かすり傷がほっといても自然に治るように、誰もがその力を持っています。しかし、特に骨折や脱臼などの障害は、治療者による施術がなければ、変形したままの状態になります。その一方で腰痛などの障害は、西洋医学でも代替医療でも治療者が施す施術によって治る場合もありますが、治療者が関わらなくても時間をかけて自然に治る場合もあります。

例えば、手技療法で、ある部分だけを調整して、「後は自然治癒力に任せる。身体に治させる」という理屈で患者を帰して、数日後に症状が改善したとします。その改善は調整したから改善したのか、もしかしたら調整しなくても自然治癒力で治っていたかもしれません。その真意を判断することは容易なことではありません。調整したから数日後に症状が改善したかもしれませんし、ある種の儀式のような暗示効果で改善したかもしれません。患者にとっては改善されれば、どのような理屈でも関係のないことですが、治すことを重んじている治療者にとっては、大切な関心ごとだと思います。

前述したように治す治癒力は患者自身にありますが、自然治癒力を100%発揮できるように施術をしているのは治療者であるということが、明確に分かる施術を行っているかどうかが治療者としての価値を決めているのではないでしょうか。代替医療の治療者は、構造や病理ではなく生命エネルギーの滞り(ブロック)を治すことが本来の役割だと私は考えています。しかしながら、その本質から外れて、西洋医学の医師のように診断して、慢性症状を構造的に捉えている代替医療の治療者は少なくはないように思います。

西洋医学の知識と技術がなければ治らない様々な病気や症状はたくさんあります。機械論的な思考でなければ治せない症状や病気がある一方で、機械論的思考の医療では限界がある慢性症状もたくさんあります。とくに慢性症状の多くは、機械論的に分離、分割的な思考ではなく、有機論的思考、すなわち、生体エネルギーを基準に、関係性、統合性、システム思考で考える必要性があると私は考えています。

構造的異常がなく機械論的な医療が施せない慢性症状に対しては、特に治る力を阻害している生体エネルギーのアンバランスをいかにして整えることができるかが重要な鍵になるのです。代替医療の治療者に求められるのは、自然治癒力を妨げている生体エネルギーブロックを除去するために生体エネルギーを調整して“治す”ということす。生体エネルギーブロックは目で確認することはできませんが、外科医が肉体の構造を修復して治すという行為と同じように、生体エネルギーブロックを調整して治しているのだと私は考えています。

生体エネルギーブロックが判断できる熟練した治療者は、症状に関連する生体エネルギーブロックを検査し、それを調整することができるので、多くの症例において、なぜ、症状が改善したのかが理解できていると思います。そのように生体エネルギーブロックを調整することで、自分が“治している”という感覚を毎日の臨床で感じられるようになります。そして、“治せる治療者”としてのアイデンティティーや誇りを確立することができると思います。

代替医療の治療者を志す多くの方々とともに“治せる治療者”の価値を高めて参りたいと思います。

2018年5月1日火曜日

イップスの根本的な改善

先日、2年前に送球イップスで来院され、今春から大学3年生になる野球選手が春休みを利用して来院してくれた。現在は社会人のクラブチームでピッチャーを担当しているとのこと。イップスはかなり改善されているが、少し気になることがあるらしく、持参してくれたiPhoneの投球フォーム画像を見ながらPRT検査。ご本人も気になっているところで陽性反応を示す。いくつかの潜在意識が関係する誤作動記憶に加えて部分的な投球フォームに関する意識への誤作動記憶も関係していた。

ビデオ映像から導き出された陽性反応は、ピッチングのテイクバックの動作だった。本人に質問してみると、「後ろに腕が伸ばせていない・・・」とのことだった。原因となる誤作動記憶を検査すると、過去の肩や肘の痛みの記憶が関係していた。関節に痛みが生じたままで、動作を繰り返していると知らず知らずのうちに、かばう動作を身体が学習してしまい、腕が自然に後ろに伸びなくなったということが疑われる。痛みの誤作動記憶の調整を行なった。

PCRTでは誤作動記憶のパターンを瞬時に検査することができるので、根本的な調整が可能になる。もしも、このような検査と調整をしなければ、恐らく、投球フォームを改造しようとするだろう。表面的には投球フォームの改造で改善しそうだが、潜在的心理面が関係する無意識の記憶(クセ)による影響はそれほど簡単ではない。意識でコントロールできれば、そもそもイップスにはならない。意識と無意識が離れているからイップスの症状が生じるのであって、そこの関係性にアプローチしなければ、根本的なイップスの改善が遅れるだろう。

2008年度の北京オリンピックで、米国の陸上女子100メートルハードル代表のロロ・ジョーンズは、トップで走っていたにも関わらず、最後から2番目のハードルに引っかかって金メダルを逃してしまった。この時彼女は、「足をしっかり伸ばそう」と意識してしまったと、後で語っていたという。これは、全体的なゴールへの目的意識から、部分的な意識へと変化したために、いわゆる誤作動が生じたのだと考えられる。最近ではビデオ映像を見ながらフォームの修正に意識を向ける傾向にあるが、部分に意識が集中しすぎてしまうと、体全体の調和が乱れて、イップスのような誤作動を生じやすくなる。

さらにパフォーマンスを上げるためのフィームの改造は効果的なるかもしれないが、イップスを改善するっためのフォームの改善はむしろ治りが悪くなる傾向がある。なぜなら、多くの選手は小学生の頃からその競技を継続しており、そのフォームで活躍されている。イップスの原因はフォームを変えたから悪くなったわけではない。問題の矛先を間違えないようにしないと改善は難しくなる。

「部分と全体との関係性」、「意識と無意識との関係性」、「心と身体との関係性」はイップスの改善には必要不可欠な概念であり、単に部分的なフォームの改造、あるいは、神経学的機能の改善だけでは本質的な改善は困難になるだろう。

2018年4月6日金曜日

患者(クライエント)への「質問力」その9【傾聴のスキル1】

患者(クライエント)への「質問力」その9【傾聴のスキル1】

治療者は患者(クライアント)が何を求めて来院されたのかに関心を寄せ、患者のニーズをしっかりと把握することが必要になる。そのために患者に寄り添いながら傾聴の質の向上を目指さなければならない。傾聴の質を高めるためにはいくつかのスキルがある。最初のスキルは「あいづち」と「うなずき」である。それらは、言語的には「ええ〜」、「はい〜」、「そうですね〜」、「なるほど〜」、「ほ〜」などで相手の承認を促す。非言語的にはうなずいたり、会釈をしたり、アイコンタクトをしたり、身を乗り出したりして相手の話に興味を示す行為がある。言語的にも非言語的にも対話の中で相手の「あいづち」と「うなずき」があると、真剣に傾聴してくれているというのが分かるので話しやすいというのは誰もが経験していることだろう。

また、相手の話すペースや姿勢に自然な感じで合わせることでさらに話しやすさも増すだろう。これを「ペーシング」、「ミラーリング」とコーチングでは呼ばれており、相手が話しやすい状態を作り出すことをいう。例えば、対話の相手が腕組みをしていたり、足を組んでいたりすると、あいづちやうなずきがあっても心を開いた対話は期待し難いだろう。ただし、ただ単に「あいづち」と「うなずき」があればいいというものではない。時折、対話で絶え間なくうなずく人もいるが、「本当に理解しているのだろうか?」「理解してくれているようだが、表情が不自然に感じる・・・」などと、何となく心の奥で違和感を感じることがある。その場合、表面的には問題のない対話に見えても、心の奥に響くような対話にはならないこともある。あえて言えば、表面的なテクニックで飾られた「建前」の対話という感じになるのだろう。心に届く「本音」の対話をするために、まずは、心から相手の立場に立って相手の心に寄り添って、判断や評価を入れない傾聴が求められるだろう。

初対面の相手に対して、相手の立場になり、相手の心になるというのはそう簡単にできるものではないだろう。ある程度の対話を重ねていく中で相手の置かれている立場や状況が見えてくる。そうすると相手の立場に立って相手の心に寄り添いやすくなる。だが、クライエントをサポートする立場にある治療者が全面的に相手の立場になることができれば、クライエントをサポートしやすくなるのかというとそうでもない。それはなぜかというと、もしも、完全にクライエントの立場になりきってしまうと、クライエントと同じ目線になり、クライエントが気づく必要のある盲点も見えなくなって、視野が狭くなる場合がある。相手の立場になりつつも、第三者的な立場をとって、客観的にクライエントの置かれている状況を認識する必要もある。治療者は、クライエントの立場になったり、一歩引いて客観的に見たりしながら、クライエントに寄り添って承認するスキルが求められるだろう。

対話の際の表情や姿勢などの外的な要因と合わせて、思考や心の内的な要因も大切である。聞く態度に問題がなくとも、相手が話している内容や心情をしっかりと理解できていなければ、対話が弾まなくなり相手はその不自然さに違和感を感じるだろう。相手の話す内容をしっかりと理解して、相手が言わんとしていることを把握している人は、対話の中で時折、話の要点となるキーワードをポツリと相手に返すことがある。これは「おうむ返し」というように呼ばれることもあるが、「おうむ返し」のスキルは単に相手の言葉を真似るのではなく、相手の話の中で要点と思われる「言葉」をうなずきながら繰り返すスキルである。相手の話の内容をしっかりと理解せず、あまり意味のないところで言葉を引っ張り出して「おうむ返し」を使うと、相手は共感を得られずに対話の距離が離れてしまうかもしれない。

2018年3月7日水曜日

患者(クライエント)への「質問力」その8【関心のベクトルを合わせる】

患者(クライエント)への「質問力」その8【関心のベクトルを合わせる】

通常医療では、専門分野に分かれているので、患者が求めているニーズや関心の寄せどころも分かりやすい。しかしながら、慢性症状になると関心の寄せどころも様々になる。事故などによる急性症状の場合は、身体的な構造や機能的な異常に関心を寄せることが最優先される。通常医療では慢性症状を抱えた患者の場合でも、まずは身体の構造的、並びに機能的な問題がないかどうかの検査が行われる。もしも、身体的な異常が見つからない場合は、メンタル面との関係性が疑われ、心療内科の受診を勧められることが多い。もしも、患者自身もメンタル面との関係が身体の症状に影響を及ぼしているという理解があれば、治療者と患者との関心の寄せどころが共通するので、関心のベクトルを合わせることで治療もスムーズに進みやすくなる。

その一方で、本質的な問題にメンタル面が関係しているにも関わらず、患者や治療者がメンタル面に関心を寄せずに、本質的な問題解決に至らずに症状が長引くことがある。メンタル面が関係しているか否かの判断は、目で確認できるものではないので治療者の経験や洞察力が求められる。経験のある治療者がメンタル面の関与を確信したとしても、患者自身が自らの心の影響に関心を寄せなければ、両者の関心のベクトルがずれてしまい治療は進展しなくなるだろう。症状の改善を遅らせる例としてよくあるのは、画像診断などで構造異常が見つかり、本来はその構造異常が症状の原因ではないのに、その構造異常ばかりに関心を寄せて、本質的な原因となるメンタル面に関心を寄せない場合である。

本質を見極めることに長けている治療者であれば、例え構造的な異常が見つかったとしても、その異常は症状に関係していない可能性があることを患者に丁寧に説明して、メンタル面との関係性にも関心を寄せるように促すだろう。また、慢性症状の原因がメンタル面に関係しているということに対して否定的な治療者であれば、メンタル面との関係性にはほとんど関心を寄せずに、身体的な構造異常や機能異常にばかり関心を寄せて本質的な原因から目を反らしてしまうだろう。人間は機械仕掛けのロボットにように構造的な問題だけ、あるいはメンタル的な問題だけというように両者を白黒分けることはできない。心と身体は有機的につながって様々な環境に適応しながら、自然治癒力を保ち続けている。

本質的な原因がどこに関係しているかの探索は治療者としての重要課題である。臨床経験のある治療者が症状の原因はメンタル面との関係性にあると直感的に感じたとしても、患者自身がメンタル面に関心を寄せなければ症状改善には結びつかない。身体の症状は身体の問題であり、心の問題にしたくない患者も少なくはない。その場合、術者が無理にメンタル系の施術を勧めても治療効果は期待できない。メンタル系への治療は、患者と術者との関心のベクトルが一致して初めて得られるもので、治療者の技量や経験だけでは結果が得られるものでない。