2017年10月4日水曜日

書痙(ジストニア)

病院で書痙(ジストニア)と診断され、投薬治療を受けて、9ヶ月ほど症状が改善されなかった患者さんが、5回目の調整で劇的な改善を示したので報告させていただきます。

患者情報
高校2年生、女性、9ヶ月前に英単語の学習のためにノートに5枚ほど書いた後に手が震えて文字を書くのが不自由になったとのこと。1ヶ月後に脳神経外科を受診、CT検査などを受け、書痙(ジストニア)の診断を受ける。いい日と悪い日があるようで、たくさん文字を書くと悪くなる傾向があるとのこと。

初回調整

筋骨格系の機能評価はNRS7レベル、メンタル系の機能評価はNRS=9レベル。書ける自信の最高を10としたら3レベル。

AMのプロトコルに従って骨盤、脊椎部を調整。手関節などの症状部位へのAM検査では陰性反応。PCRTハード面調整法は、頭蓋骨、ブレインマップ、臓器反応点経絡調整法を行う。ソフト面では、いくつかの信念や感情に関係するキーワードから詳細を明確にして調整を行う。最後に出た上位の成績優秀グループから外れるという「恐れ」に関する調整は効果的だったと感じた。調整後の機能評価は、筋骨格系のNRS=4レベル、メンタル系のNRS1レベル。書ける自信は8レベルに上昇。

実際に書いてもらうと、施術前よりも指に力が入るようになったとのこと。

初回調整の調整前の映像


初回調整の調整後の映像


2回目から5回目の調整

2回目と3回目ではお姉さんとの比較に関する心理的なキーワードが示された。いくつかの感情や信念に関するキーワードが示されていたが、5回目の調整の際、「警戒心」というキーワードから、「書けない自分」から「書きたくない自分」へと認識を深める。書きたいけれども手指が動かないから書けなくなるというのが書痙の一般的な理解であるが、心理学的には、「書きたい」という意識的気持ちとは裏腹に無意識がブレーキを掛けている場合が多々ある。

書きたくない理由は、シンプルに言えば、「めんどくさい」とう感情が関係していた。それは、試験勉強に対する義務感に関係するわけだが、私は直感的に「何のために勉強するのか?」という「ゴール設定」の必要性を感じた。そこでコーチング手法を導入。ゴールに関係するいくつかの質問をさせていただいた。大きく分けると二つの選択肢が明確になった。

一つは心理系の職業、もう一つは事務系の職業。そして、「もしも、その仕事についたら何が得られそうですか?」というそのゴールで得られる価値観に関する質問をしてみると、心理系の仕事に就いた場合は、人を手助けできるという充実感。事務系の仕事は、特に得られるものがなく、一人でコツコツ仕事をしているイメージしか浮かばないという。

そこで、身体に聞く生体反応検査(マッスルテスト)をしてみると、心理系の仕事に就くために勉強をしているイメージの方が明らかに力が入ることを本人も自覚した様子。心の奥(無意識)の本当の自分は、心理系の仕事に就きたいのだということが明確になったようだ。

5回目の調整の時は試験中で、もう1日試験があるとのことだった。以前よりは書けるようになったが、書いていると疲れる感覚があるという。検査をしてみると前回明確になった将来に対する「執着心」と将来の目標が明確になった「喜び」の感情が示された。どちらも肯定的な要因だった。そして、その日の調整後には、本人も驚くほど、スラスラと文字が書けていた。

5回目の調整前の映像


5回目の調整後の映像

考察

ジストニアは、自分の意思とは裏腹に筋肉に力が入らなくなったり、こわばったりする症状で、部分的に生じたり、全身的に生じたりする。これは脳からの信号に誤作動が生じたため、「心と身体の関係性」がうまく機能していない状態である。その誤作動を脳が学習し記憶してしまったために、元の正常な状態に戻せなくなっているということが原因として考えられる。この症状を改善するために、主に心身条件反射療法で、ジストニア症状に関係する誤作動記憶を引き出して身体を調整する。


心と身体の関係性を無視して外科的に処置をする手法もあるようですが、心と身体は密接に関係し合っているのが本来の姿である。この症状はたまたま心と身体の関係性に誤作動が生じることで引き起こされていると考えられる。心にいい悪いとかはなく、ただ、どのような心の状態が関係していたのかを認識することは症状を改善する上でとても大切な治療のプロセスになります。臨床でも誤作動記憶に関係する心の状態が分かれば分かるほど改善度も高まる傾向になる。PCRTを学んでいる先生方が、様々なジストニアの症状改善に貢献しています。ジストニアの症状でお困りの方は、ぜひご相談いただければと願う。

2017年9月20日水曜日

ICC国際コーチ養成講座のご案内

ライフコンパスアカデミー(LCA)代表の保井です。LCAではAMセミナーとPCRT研究以外にICC国際コーチ養成プログラムを組み込んでいます。私たち治療家は臨床現場において様々な症状を抱えた患者さんに遭遇します。様々なテクニックを修得することである程度の成果を引き出し、患者さんに喜んでいただくことができます。

しかしながら、臨床経験を積み重ねるごとにハウツー的な手法だけでは対応できない事例も多々あります。インターネットの普及に伴い、様々な情報が飛び交う中で、患者さんたちの求めるニーズもだんだんと複雑性を増しています。施術者がどのようなスタンスで施術を行っているかによって患者さんのニーズも異なってくると思いますが、「刺激反応」の反射系だけの施術では、患者さんが求めているニーズに対応できない事例もだんだんと増えてきているように感じます。

脳の三層構造に照らし合わせてみると、大脳辺縁系や大脳皮質系といった心理面も複雑に関係しています。反射系の調整法であれば、神経学的刺激によって肉体面の誤作動記憶を引き出し調整することで、異常反応を正常反応に書き換えることが可能です。しかし、頭(心理面)に関係して様々な感情や意味付けが関係している場合は、「身体の記憶(運動性記憶)」に対して、「頭の記憶(認知性記憶)」を引き出して調整することが求められます。

臨床経験が増すにつれて、臨床現場では様々な「応用力」の必要性を感じられているのではないでしょうか?様々な患者さんへの対応や治療院内でのチームワーク、さらなる成長のためのゴール設定や戦略戦術など、単なるマニュアル手法では解決できないその場、その場に応じた「応用力」や「思考力」が求められます。

ICC国際コーチング養成トレーニングを受講されることで、この「応用力」や「思考力」を幅広く身につけることができると私は考えています。この「応用力」と「思考力」は特にICCのトレーニングのワークの中で繰り広げられる、それぞれの経験の中で培われます。書物だけでは身につかない知性がそれぞれに養われます。

「知識」とは「言葉で表せるもの」であり、「書物」から学べるものです。一方、「知恵」とは「言葉では表せないもの」であり、「経験」からしか学べないといわれています。スマホで検索すれば、ありとあらゆる情報が引き出される時代において、「直観力」「洞察力」「大局観」などと呼ばれる知性がさまざまな分野で求められています。そのような知性は深みのある経験を通じて磨かれ、その経験を通じて本質的な知恵が蓄えられていくのではないでしょうか?

ICC国際コーチング養成講座を一度受講されたからといって、すぐにそのような知恵が身につくわけではありません。しかしながら、単なるコーチングのハウツウ的なスキルを超えたコーチとしての基礎力を身につけることで、臨床現場や経営、さらには人生においてじわりじわりと深みのある「思考力」や「応用力」が身についてくると信じています。


ご自身の無限の可能性を信じさらなる高みを目指そうとされている先生方にはぜひ参加していただきたいトレーニングです。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

2017年9月19日火曜日

「素直さ」で健康を創る

「素直さ」は人間の成長において、とても大切であると一流の人の賢人達は説いています。理屈や言い訳をせずに素直に修行に励む子は吸収が早く伸びていく。問題に直面しても、素直にものを見ていくことで解決の糸口が見えてくる。

1000年以上もの昔、設計図や重機などがない時代にどうして東大寺や薬師寺などのような洗練された建造物が建てられたのでしょうか?宮大工棟梁、西岡常一氏の内弟子の経験をもつ小川三夫氏は、「おそらく奈良時代の工人たちは何も心がとらわれることなく、素直に物事を捉えることで、あれだけの知恵を生み出したのでしょう。それを再建しようと思えば、やはり自分を無にして昔の工人に心を合わせることが大事です。そうすると「つくってやろう」というのではなく「自然に作り上げていく」という感覚が分かってくる。私はこれまでの人生の中でこの素直さということをとても大事にしてきました。」と述べています。

治療者が、「治してやろう」という心で患者さんに接するよりも、「患者さんと一緒に二人三脚で自然治癒力を引き出そう」というスタンスでアプローチした方が、治療効果も高くなる傾向があります。患者さん達は治療者に治してもらうという感覚がごく自然なのかもしれません。しかし、「治す力」というものは本来患者さん自身がもっているものなので、治療者はその「治す力」を引き出す調整をさせていただいているのです。

身体に聴いて、誤作動の反応を引き出し、「治す力」をブロックしているところを調整していく。不思議と思われる「生体の反応」も素直に受け入れてくださる患者さんは治りも早いという傾向があるようですが、通常医療の理屈で疑問を抱く患者さんにとっては、その反応が腑に落ちない。すると自然治癒力も引き出され難くなり治りも遅くなる傾向があるようです。

素直な人に共通するのは、うまくいかないのは自分のせいで、周りのせいにはしないという傾向があります。ノーベル賞を受賞した山中伸弥氏は、「うまくいった時はおかげさま。うまくいかなかった時は身から出た錆」を信条にしてきたといいます。また、松下幸之助氏も「僕はな、物事がうまくいった時にはいつも皆のおかげだと考えた。うまくいかなかった時はすべて自分に原因があると思っとった」といっていたそうです。

人は生きていく上で、様々な困難や壁に遭遇することがあります。その時、自責にするのか、他責にするのかで、その人の人生は大きく左右されるのではないでしょうか。健康問題に関してもそう思います。特に原因不明の慢性症状などは、基本的には自分自身の生活習慣や心の習慣が症状の原因に関係することが多いのですが、改善し難い人は単に身体だけの問題にしたり、他者や周りに原因の矛先を向けたりする傾向があります。

他者や周りが作った原因だから、自分には変えられないと思い込む。もしも、自分にも原因の一部があると思うことができれば、そこから原因を変えることができますが、自分には全く非がないと思い込んでいるから他者次第、医者や治療者次第となり、自らの自然治癒力も変化し難くなる傾向が生じます。

少しでも「病気や症状は自らが創ったものである」という前提に立てば、自分自身を省みて、変えるべきところを変えれば、病気や症状の流れも変わりやすくなります。

「過去と他人は変えられない。しかし、今ここから始まる未来と自分は変えられる。」エリック・バーンより。 

2017年9月1日金曜日

閃き(アイディア)が生まれるとき

 致知の2017年9月号の特集で、閃きに関する記事が掲載されていた。
「閃きは人間内面の成長の原動力」として、賢人の言葉を紹介していた。

斎藤一斎は「大上は天を師とし、その次は人を師とし、その次は経を師とす・・」もっとも優れた人は人や本からではなく、天から直接学ぶという。人は閃いた時、「何か(閃き)が上から(天)から降りてきた」などということがあるが、天から教えてもらったという意味であろう。

成功した経営者や後世に何かを残した人、あるいは心に残る名曲を作った人などは、ふとした時に閃くということをよく聞く。忘れない様にメモ帳などにそのアイディアを書き残しているという。天から降りてくるというよりも、その人の無意識レベルの脳が今までの情報を整理して意識化しているのだろう。

このような価値のある閃きは、単に脳の訓練をするとか、瞑想をするとかで簡単に出てくるものではないだろう。そのような訓練も大切だが、その閃きの背後には様々な経験や知識の積み重ねによる努力が蓄積されているはずだ。

経営の神様といわれている松下幸之助氏も閃きの基本は「熱意」だという。「熱意が基本にあると、絶えず、寝ている間でさえも考えるようになる。僕は寝る間も惜しんで仕事をしてきた。・・・そうなると不思議なもので新しいことが浮かんでくるものだ。浮かばないとすれば、それは熱意が足りないことにほかならない」という。

また、稲盛和夫氏も「情熱」を大切にしてきた人だが、「来る日も来る日も顕微鏡をのぞいていたら、顕微鏡の向こうに宇宙が見えた」「宇宙には知恵の蔵のようなものがあり、必死に研究に打ち込んでいると、その知恵の一端に触れ、画期的な新材料や新製品を世に送り出すことができた・・・」と述べている。


つまり、純粋に何かのために努力をしてきた人には何かの知恵が天から与えられるということだろう。一時的な情熱なら誰にでもできるが、何年も何十年もその情熱を持ち続けることは並大抵のことではない。情熱の質には色々あるだろうが、密かな情熱を持ち続けて、純粋に努力をし続ければ、その努力は裏切らないだろうし、その努力に対して天は「閃き」を与えてくれるのだろう。

2017年8月30日水曜日

エピソード記憶調整法に関連する心理的要因

1ヶ月半ほど前に病院で注射を受けて以来、肘や肩の周辺が痛くなったとのこと。注射を受ける際、一回で済まずに何度もやり直されたらしい。症状の程度は10段階(NRS)で7レベル。肩や肘周辺の目安検査では筋肉関節系の陽性反応が示されていたので、アクティベータ療法にて調整。筋骨格系の症状の程度は4レベルまで軽減。

その後患者さんから「記憶」ですかね?という指摘。

この患者さんは別の症状が、PCRTの「エピソード記憶」で改善した経験があるので、そう感じたのだろう。

検査でも「エピソード記憶」の調整法が必要とされたのでその調整を行う。注射の際に痛みを感じている自分の姿を想像してもらうとすぐにイメージができた様子で、検査では陽性反応が示された。次に注射の際に痛みを感じていない理想の想像ができるかを尋ねたところ、少し考えられた後・・・・・「サイボーグ人間になります。(笑)」といって想像され、検査では陰性反応が示された。

エピソード記憶の調整後、症状は1レベルまで軽減。

以前、エピソード記憶の調整法を経験した患者さんだったので調整もスムーズにいった。しかしながら、稀に理想の想像が「できない」という患者さんもいる。その理由も人それぞれで、「今が痛いから想像できない」「よくなった経験がないから想像できない」など、想像できない人は、それなりの理由がある。

例えば、鳥の様に空を飛ぶことは、現実にできる人はいないが、想像することはできる。しかし、そのようなファンタジーな想像でさえもできないという人がいる。また、ネガティブな空想はしやすいが、ポジティブな空想はしにくい人、人の幸せは想像しやすいが、自分の幸せは想像しにくい人などさまざまな特徴がある。

もしも、今回の患者さんのように、SFやファンタジーの映像作品を見た経験があれば、その映像に自分を置き換えるだけで、現実にありえないことも簡単に想像できるだろう。本来、人間の脳はそのような想像力や空想力は備えられているはずである。


2017年8月21日月曜日

PCRT中級2へのご案内

次回の研究会では各種アレルギーの調整法、五感チャートの応用、信念、価値観チャートの応用などを紹介します。PCRTのアレルギー治療は、特定のアレルゲンに条件付けされた脳幹脊髄系の「誤作動記憶」を調整するとともに、大脳辺縁系や大脳皮質系に学習された「誤作動記憶」を書き換える調整法によってアレルギー症状の体質を改善していきます。

アレルギー治療ではアレルゲン情報を呼吸振動法で適応させる調整法と、アレルゲン情報と頭蓋骨調整法や臓器反応点経絡調整法などのPCRTハード面調整法と組み合わせた効果的な調整法も紹介する予定です。花粉症や食物アレルギーなどで困っている患者さんには自信をもって調整ができるようになると思います。

大脳辺縁系の分野では最後の領域になる「価値観」と「信念」に対するアプローチの仕方をご紹介します。感情、価値観、信念の違いを明確にして、心の構造を把握できるようになると、メンタル系へのアプローチの全体像が見えてくるようになります。メンタル系へのアプローチは、患者さんが自覚しているストレスだけとは限りません。「心と身体は密接につながっている」という基本原理を考慮すれば、心身両面へのアプローチは必須になるのではないでしょうか。

PCRTの熟練度が進むにつれて、マインド系へのアプローチを好んで使ってくださっている先生も増えてきているようです。それは、反射系の調整法だけよりも、更なる深みを患者さんと共有できるからです。その一方でマインド系へのアプローチに苦手意識を感じている先生もいるようです。PCRTの調整法をしっかりとマスターして、PCRTのマインド系領域の検査・調整の基本ルールに従い、ソフト面調整法をマスターできれば、恐らくスムーズに、しかも楽しくアプローチできるようになると思います。何よりも患者さんが心の奥から喜んでいただけるのを感じることができると思います。

【マインド系領域検査】
1.       NO JUGEMENT! 評価、判断を入れない
2.       患者が望んでいる検査・調整法を行うという前提で進める
3.       患者に何かを気づかせて、変えてやろうという思惑は持たない
4.       術者は選択肢を提案し、時にはチャレンジするが、あくまでも患者が求めているラインに寄り添う
5.       患者の自己矛盾を丁寧に扱う

最近、PCRT研究会で教授している内容をしっかりと理解し、臨床現場で使って患者さんに喜んでもらっている先生がいる一方で、もしかすると本質的治療への理解を深めるよりも、表面的な手法ばかりを求めているのかなと感じることがあります。

今年は、PCRT研究会のターニングポイントの年でもあります。術者の熟練レベルを統一する試験制度も充実してきました。受講してくださっている先生が、本質的な理解を深め、さらに現場の患者さんに貢献できるように、技術、技能、教育レベルの質を上げ、さらに発展し信頼される研究会へと進化していきたいと思います。

それでは、今年最後のPCRT研究会でお会いできるのを楽しみにしております。